ポインター・セター以外の鳥猟犬 ヨーロッパ原産 人気度★4犬種 大型犬 抜け毛(多い)

ラブラドール・レトリバー

犬図鑑 ラブラドールレトリバー ガンドッグ

人気度       4 out of 5 stars

初心者向き     5 out of 5 stars

お手入れの簡便度  5 out of 5 stars

盲導犬、警察犬、麻薬探知犬、災害救助犬…など、大型犬の人気ペットとしてもよく見るけど様々な人間の手助けをする犬としても有名だよ。

犬種の歴史

世界中で大人気のラブラドールレトリーバーですが、意外にも犬種の確立は19世紀と他の古い犬種に比べたら歴史が浅い。それ以前にはレトリバー6種の元になったレトリバー種がカナダに存在しており、イギリス人から見れば1800年代に国内に突如現れた新しいタイプの作業犬でした。カナダのニューファンドランド・ラブラドール州、ラブラドール島で狩猟や漁業を手伝っていた犬たちをイギリス人が見つけ、持ち帰ったのが現代の各レトリバー種の始まりです。ニューファンドランド島の中心都市セントジョンズにちなんでセント・ジョンズ・ドッグと呼ばれ、これがラブラドールと全レトリバー6種の祖先と言われます。イギリスはその頃、漁業の取引でニューファンドランド付近を盛んに行き来していました。この犬を使った猟としては、犬を海岸から沖に向かって泳がせ、漁網についているコルクの浮きを回収させるやり方と、漁業船から海に飛び込ませて漁網を海岸まで持って行かせるという方法がありました(水中回収犬)。水中では特徴のあるオッターテイル(カワウソの尾)と言われる尾を舵代わりに使い進行方向を定めていました。この尾は現在でもラブラドールの特徴です。

ニューファンドランド」という犬種もいるよ。ラブラドールの元になった犬とどちらもニューファンドランド島で暮らしていたんだ。このページで出てくるニューファンドランドの犬とは、ラブラドールの元になった犬のことを指すよ。

ニューファンドランドの犬はトレーニングしやすく性能が良いとイギリスで評判となり、漁業船に乗った商人は積極的にこの犬を仕入れ本国に持ち帰るようになります。イギリス人は狩猟犬として嗅覚の性能を高めるため、セター(第7グループの犬)を交配していきました。鼻が素晴らしく効き逃げ隠れた手負いの鳥をきちんと追跡できること、ポインター (第7グループの犬) にはできない即座に停まる能力、獲物を咥えた時に傷つけないようにやさしく持つソフトマウスができること、獲物がすぐそこに居ても指示がなければ動かない服従性など…、レトリバーの特性が重宝され、交配により強化されていきました。

レトリーブ「retrieve」とは回収するという英語だよ。狩猟文化のヨーロッパでは銃で鳥やうさぎ、シカなどを銃で撃って食糧にします。その時に活躍する犬が藪や林に隠れている獲物を指し示すポインター、セター(ポインティング、セッティング)をだったり、飛び立った鳥を打ち落としてから回収(レトリーブ)してくれる犬がレトリバーなんだ。日本ではあまり馴染みが無いかもしれないけど、欧米では現在でも趣味として狩猟を行う文化があって、休日にお父さんが犬を連れて狩りに出かける。そこでは狩られる獲物がなるべく苦しまないような配慮や動物福祉に基づいた法律での決まり事に則って行い、最後はもちろん「いただきます」の精神で食糧にするよ。欧米での狩猟という趣味は、日本で言うと休日にお父さんがゴルフに行くような感覚に近いんだって。そのくらいメジャーな趣味です。

レトリーブを専門に行う犬が発達したのには、銃の進化が関係してきます。1800年代中頃、イギリスでは猟銃が改良され連続の早打ちができるようになったことから、狩猟が富裕層の趣味として確立していきます。そして銃性能の向上で狩猟のやり方も変わっていき、射手がライン状に並んで茂みを歩きながら羽ばたいたところを打ち落とす方法や、定位置で射手が待機し(これもライン状)、勢子(と呼ばれる射手のエリアに獲物を追い立てる人)によって追い立てられた鳥を撃つ…という方法に変わっていきました。この方法では射撃が終わるまで、射手の後ろで銃声が響く中じっと待機して待てる犬が必要になりました。従来のポインターやセターはこれがちょっと苦手だったと言われます。エネルギーレベルが高すぎて、獲物を前に落ち着いてじっと待つのが苦手。さらに獲物を強く咥えすぎてせっかくの獲物がぐちゃぐちゃになってしまう…。また、スパニエルでは遠距離の獲物をすばやく回収するには小型すぎることや、水場で漁をする時に耳が水にぬれると乾きにくく耳の病気になりやすいというデメリットがありました。当時の人はプードルも回収犬として使ってみたものの、やはりソフトマウスが苦手であり適役では無かったようです。こうしてイギリス人が新しい役目を果たせる犬の需要と改良に苦心しているところ、カナダのラブラドール地方からもたらされた黒い犬にスポットライトが当たり、現在の万能犬が作られていきます。

ニューファンドランドの犬をレトリバーとして改良し、最初に出来上がったのがカーリーコーテッドレトリバー(現在もある犬種)とウェービーコーテッドレトリバーと呼ばれる犬でした。そして後者は後にフラットコーテッドレトリバーになっていきます。1890年代になるとより身軽でスポーティなレトリバーを作ることがトレンドになり、1903年に現在のラブラドールレトリーバーが犬種として確立しました。

Photo gallery1

銃声がする中、待機している様子
Photo by FieldsportsChannel TV
性格の特徴

盲導犬、警察犬、麻薬探知犬、災害救助犬…など、多目的な仕事を有能にこなし、家庭犬としても落ち着きがありヒトや他の動物にもフレンドリー。アクティブに過ごすときはアジリティ(障害物競走)、ドッグダンスなどドッグスポーツも上手にやってのける水遊びが大好きなオールマイティドッグです。世界各国で人気ランキングの上位に入るのは必然と言えるでしょう。このオンとオフの切り替えモードは、犬種の歴史に培われた結果であります。学習能力と好奇心に溢れ、人間の言うことを不思議と理解してくれるので、何かを教えようと思ったらスルスルと覚えていってしまいます。

狩猟のお手伝い犬として落ち着きと、遠隔で人の指示をきくために作られた犬種なので、一般的にしつけやすいと言われるよ。水遊びやボール遊びが大好き、人と一緒に何かをするのが大好きです。

しかし、忘れてはならないのは学習能力と作業意欲が高いということは、退屈と刺激不足ではストレスが溜まると言うことです。また人間に都合の悪いこともすぐ覚えてしまいます。飼い主側が単に表面的な「飼いやすい」「フレンドリー」という言葉のみに安心し、しつけの知識を持たずに接してしまうと、家の中を破壊される、他の人に飛びつく、引っ張られて引き倒される…等々のいわゆる問題行動に悩まされます。特に1歳、2歳頃までの若い時は、ラブラドールとはいえエネルギッシュなので、力の強い大型犬を飼う覚悟、エネルギーを適切に発散させてあげる時間を取る覚悟をきちんとした上で飼いましょう。

どんな犬でも社会化トレーニング、環境馴致(慣れる)トレーニングを行い、家庭内のルールを教えるための一貫性を持った対応は必須です。それができていれば、この優秀な万能犬と楽しく安全なドッグライフが送れることは間違いなしです!

見た目の特徴

実はラブラドールには用途によって2種のラインが存在します。家庭犬として一般的なショータイプと、実際に猟に使われるワーキングタイプに分かれ、後者はよりスリムでシュッとした見た目になっています(Photo gallery2参照)。ドッグスポーツに力を入れている人は、ワーキングタイプのブリーダーから購入する人も多いです。毛色はイエロー、ブラック、チョコレートの3種。短毛で手入れは簡便でしょう。食欲旺盛な子が多く、最近の研究ではラブラドールの中には食欲スイッチをオフするための遺伝子に突然変異が起き、スイッチが入ったままの個体も存在することがわかっています。研究段階の結果ですが、いずれにせよ食欲がありご褒美のモチベーションが高いということは訓練もしやすいのですが、肥満には注意です。

犬種名ラブラドール・レトリバー(Labrador Retriever)
原産国イギリス
大きさ大型犬
抜け毛の量多い
最低運動量目安60分×2回/日
平均寿命目安10~15歳
体高54~57cm
体重目安25~36kg
犬種グループ8G ポインター・セター以外の鳥猟犬(gun dog group)

eye catching photo by liz west

Photo gallery2

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